ANTHEMの2つのボイス!「坂本英三」と「森川之雄」

久々、おすすめボーカリスト。

第5回目となる今回は「これぞHR/HMボーカリスト」というレジェンド2人をご紹介!

坂本英三と森川之雄の両氏。現在も活動中のHR/HMバンド「ANTHEM(アンセム)」のボーカリストです。ツインボーカルじゃないですよ(笑)。詳しくは後述しますが、彼らとバンドとは何とも不思議な関係性。

互いに超魅力的なボイスを持ち、誰が聞いてもカッコイイと思えるド安定の歌唱力。エフェクトに頼ることなく、マイク1本で勝負できる”本物の”男たちです。

ANTHEMと共に、彼らの魅力を少しでもお届けできればと思います。

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ANTHEM

アンセムについて

今では中々想像し難いことですが、80年代、日本ではバンドムーブメントが起こり、数多くのバンドが誕生しました。表の世界ではアイドルが人気を博し、裏の世界ではバンド全盛、こんなイメージでしょうか。

ジャパンロックの土台が作られたと言っても過言ではない時代。アンセムは、ベーシストの柴田直人を中心に1981年に結成。1985年にメジャーデビューを果たします。長い下積みですね~。

1992年に一度解散。2001年に再結成され、現在も活動しています。

度重なるメンバーチェンジ

バンド結成から1992年の解散まで、アンセムのメンバーは激しく入れ替わってます。

リズム隊は同じなんですが、バンドカラーを決めるボーカルが3人、ギターも3人在籍していました(笑)。それ故バンドとして成熟しきれなかった、というのが正直なところです。

ただ、2001年に再結成されて後、10年以上は同一メンバーで活動し、多くの良曲を生み出してくれました。再結成後のアンセムは、他の再結成組と比較しても、最もカッコイイと自信を持って言っちゃいます。

音楽性

デビュー当初は「パワーメタル」という触れ込みだったと記憶してます。

そのサウンドはハードでヘヴィ。「バラードなにそれ?」状態で、私の知る限り、バラード調の楽曲は再結成後の1曲しかありません。

彼らの姿勢は一貫してヘヴィメタル、ではありますが、個人的にはそれだけに当てはめるのは勿体ない気がします。ボーカルメロディがしっかりしていて、歌モノとしてのクオリティが凄く高い

坂本英三と森川之雄の両氏も、メタルボーカリストという枠に収まり切らない、幅広い歌唱力を持った「ロックボーカリスト」とするのが個人的にはしっくりきます。

2人のボーカリスト

1985年デビュー時、ボーカルは坂本英三氏。彼が脱退した後、新ボーカリストとして加入したのが森川之雄氏。ファンの間では坂本派と森川派に別れる程、両名とも支持されていました。

Van Halenのデイヴィッド・リー・ロスとサミー・ヘイガーに近い印象です。あなたはどっちが好きなのよ?的な。ちなみに私はデイヴィッド・リー・ロス派かな。

2001年に再結成した時のボーカルは坂本氏。そして、現在は森川氏がボーカルです。歴史が繰り返されとります!当時は、坂本氏が離れる寂しさと、森川氏の声が聴けるワクワク感が同居してましたね。とどのつまりどっちも好きなのよね。

坂本英三の魅力

デビュー時の印象は、声の線が細く、余裕のない歌い方。正直ビビッとはきませんでした。なので彼を聴くというより、アンセムの中で好きな曲のみを聴く、という感じでしたね。

しかし、アニメタルやタクシードライバー(笑)といったキャリアを積み重ね、彼はついに晩成の時を迎えます。再結成後のアンセムで聴かれる彼の歌声は、純粋にカッコイイんです。

その声には独特の艶があり、ハイトーンも非常に滑らかに聴かせてくれます。そしてシャウトが素晴らしい!それはもうお手本のようなシャウト。エッジーなディストーションシャウトは聴いててホント気持ちイイです。

更にトーク力にも定評があり、会場を盛り上げるのもお手の物。1964年生まれの54歳(執筆時)とは思えぬ若々しさと、パワフルな歌声。今後も楽しみなボーカリストの一人です。

森川之雄の魅力

1987年、坂本氏に代わりアンセムのボーカリストに。その後1992年にアンセムを脱退するまで同バンドにて活動。解散前のアンセムを支えた森川氏のボーカル力は、坂本氏を上回るものであったと個人的には思います。

彼の歌唱力はアンセム加入時に既に完成されていて、ハードな音楽にマッチした声質だけでも、各楽曲のクオリティを一段階引き上げていると言ってもいいでしょう。

その声は芯があり太く、粘りもあります。彼の声質から生まれる伸びやかなハイトーンは耳触りが良く、坂本氏に負けず劣らず様々なシャウトを操れます。解散前のアンセムなら、私は完全に森川之雄派。単純にイイ楽曲も多くありましたし。

2014年に再びアンセムに復帰し、変わらぬパワフルな歌声を聴かせてくれています。これからが楽しみな反面、彼が脱退する時は、アンセムの2度目の解散の時となる気がします。頑張ってくれ~!

この曲を聴くべし!

坂本氏はアニメタル、森川氏はトリビュート作品等々、様々な活動を行っているのですが、今回はアンセムに絞ってオススメ曲をピックアップしています。

彼らのアルバムの傾向として、1曲目にキラーチューン、一番自信のある楽曲を持ってきている事が多いです。全てがそうとは言い切れませんが、勢いがありカッコイイ曲ばかり!

分かりやすくするために、解散前までを「前期」、再結成後を「後期」としています。

バンド「ANTHEM」と2人のボーカリストの魅力を、Check it out!

前期(1985~1987)/Vo.坂本英三

デビューメンバー
・坂本英三 (Vo)
・福田洋也 (Gt)
・柴田直人 (Ba)
・大内“MAD”貴雅 (Dr)

ANTHEM (1985)

●「Wild Anthem

デビュー作。そのド頭一発目に収録されている曲。
自らのバンド名をタイトルに入れていることからも、この曲に対する意気込みが分かります。ライブでも終盤に演奏されることが多かった彼らの代表曲です。

ただ、この作品における坂本氏のボーカルは正直軽く、高域も厳しい。Vow Wow、Loudnessを先に聴いていたので、当時は特別何も感じませんでした。実際は未完の大器だったんですけどね(笑)。

Lay Down」等、曲自体のクオリティが高いものが数曲あるだけに、実にオシイです。

ギターは福田洋也氏が担当。初期アンセムのギターと言えば私の中では彼が随一。ドラムは大内”MAD”貴雄氏で、彼は前期のアンセムを最初から最後まで支え続けた人物です。

TIGHTROPE (1986)

●「Victim In Your Eyes
●「Night After Night
●「Death To Death
●「Tightrope Dancer

前作より完成度の高い本作。アンセムの持つパワーを存分に解放した良作です。坂本氏のボーカルも高域に余裕を感じられ、切れ味鋭いシャウトもイイ感じ。

1曲目の「Victim In Your Eyes」はパワーとスピードを兼ね備えていて、テンションアップ間違いなしのアンセムメタル。2バスが気持ち良すぎ!

Night After Night」はベストにもよく収録されることの多い代表曲。アンセムらしく、メロディが丁寧に構成されていて、思わず歌いたくなってしまいます。ボーカルにはコーラスかフェイザーか、エフェクトが少しかかってる感じで、個人的には邪魔(笑)。

続く「Death To Death」は3連の曲。これバックが好きなんですよね~。特に柴田氏のよく動いてくれるベースラインがお気に入り。ボーカルは音数が少なくシンプルなので、坂本氏の若さ溢れる伸びやかな声を聴けます。

Tightrope Dancer」も彼らの代表曲。これも「Night After Night」のように歌メロがしっかりしていて聴きやすいとは思いますが、坂本氏が結構キツそうです。でも、バックはやっぱカッコイイ!

アンセム2作目にして、名盤認定してもよい作品です。

BOUND TO BREAK (1987)

●「Bound To Break

広く”名盤”と言われる3作目、なんですが、個人的にはいまいちです。曲もミックスもマスターも、全体的にまとまり過ぎていて面白みに欠けるというか、アンセムらしさが失われているように思えます。

海外を視野に入れ始めたんでしょうか。「Show Must Go On!」や「Head Strong」という楽曲を聴くとそう感じます。どちらもいい曲ではあるんですが・・・。

それでも、タイトルチューンであり1曲目に収録されている「Bound To Break」は間違いなく名曲です。私がアンセムを知った曲でもあります。歌メロがしっかりして、日本語でも十分カッコイイことを見せ付けてくれてます。

坂本氏の声も太さが増し、この曲における歌唱は彼の魅力を存分に味わえるものとなっております。ギターも、リフ、ソロ共に印象的で、福田洋也氏の能力の高さを伺えます。

ただ作品全体を通して見ると、ボーカルが「坂本英三」でなくてもいいようなメロディラインに感じます。彼の個性が爆発するのは、やはり再結成後ですね。

前期(1988~1992)/Vo.森川之雄

GYPSY WAYS (1988)

●「Gypsy Ways

坂本氏が脱退し、本作から森川之雄氏がアンセムのボーカリストに。

まず一聴して「森川之雄」というボーカリストの実力に驚かされる事間違いなし。図太いハイトーン、安定したピッチ、当時の柴田氏が生み出していたメロディにも見事にマッチしたボーカルです。

おすすめはこれまた1曲目のタイトルナンバー「Gypsy Ways」。これまでのアンセムにはなかったタイプの楽曲で、森川氏の歌声と相まって物凄い安定感があります。そしてギターソロがいいんですよね~。耳に残りやすいナイスなギターメロディです。

小言を言わせて頂くと、全体的にはメリハリに欠ける印象で、単調と感じる部分もあります。

HUNTING TIME (1989)

●「The Juggler
●「Hunting Time

コイツは名作!とりあえず聴けばいい(笑)。

メタラーもハードロッカーも絶対これは避けてはダメ、と断言しておこうか。もうアンセムといえば、当時はコレばっか聴きまくってました。てか今でも聴く。

中でも好きな2曲をオススメとしてチョイスしましたが、全体的にクオリティの高い楽曲ばかり。収録数は8曲と少ないですが、内容があるので気になりません。

The Juggler」はアンセムで1、2を争う程好きな曲。理由は単純、”カッコ良すぎ“。アップテンポでパワーがあり、歌メロ構成も抜群。福田氏のギターはこの曲でも唸りまくっており、森川氏のシャウトも炸裂しています。非の打ちどころのない、アンセムメタルサウンド。

2曲目の「Hunting Time」における世界観は、アンセムが新たなステージへ上ったことを感じさせてくれます。ボーカルの音域も幅広く、低域からハイトーンシャウトまで森川氏が巧みに歌い上げています。そして何度も言っちゃいますが、福田氏のギターが堪らない!

他にも「Evil Touch」「Jail Break」といった超攻撃的ナンバー、森川氏のボーカル能力をたっぷりと堪能できるミディアムナンバー「Tears For The Lovers」など、良曲目白押し。

NO SMOKE WITHOUT FIRE (1990)

●「Shadow Walk
●「Do You Understand

この作品を最後に、ギターの福田洋也氏が残念ながら脱退。前作「Hunting Time」に次いでよく聴いていた作品です。

特に1曲目にクレジットされている「Shadow Walk」が最高すぎる!アンセムを知らない人に私がオススメするとすれば、絶対この曲。純粋な歌モノとして十分イケます。
曲調はミディアムロックで、シンプルながら8ビートで刻まれるギターリフが印象的。ボーカルメロディも秀逸で、それを歌い上げる森川氏の存在が、この楽曲をブラッシュアップしています。

スピード感溢れる「Do You Understand」では、初めてではないでしょうか?明確なベースソロがあります。ギターとのユニゾンプレイなど、柴田ファンは必聴。ボーカルは相変わらずの安定感でメロディも安心のアンセムクオリティ。

DOMESTIC BOOTY (1992)

●「Venom Strike

解散前の最後の作品。本作のギターは清水昭男氏で、バンド再結成後もギターは彼が担当しています。

おすすめは1曲目の「Venom Strike」。アンセムらしい勢いのある曲。ただ、本作ではコレくらいしか…です(-_-;)
森川氏のハイトーンは圧巻で、畳みかけるメロディも難なく歌いこなしています。新ギタリストの清水氏をフィーチャーするかの様に、長めのソロなのも特徴。

全体的にミックスの問題か、凄くハイ上がりなボーカル音源になってます。リバーブも少し深いというか、バックとの馴染みがよろしくないですね。バランスが悪い。

楽曲群も、淡々と流れていく印象で、個人的には消化不良気味。

後期(2001~2014)/Vo.坂本英三

再結成メンバー
・坂本英三 (Vo)
・清水昭男 (Gt)
・柴田直人 (Ba)
・本間大嗣 (Dr)

アンセム伝説再び!(笑)。ここから再結成後の楽曲紹介です。

正直最初は「ギター福田洋也じゃね~じゃん!」と失礼にも思ってしまいました。今では清水昭男というギタリストの虜です。彼は猛烈な速弾きプレイヤーではありませんが、メロディセンスは抜群。数多くの痺れるフレーズをここから生み出してくれたのであります。

柴田氏と共にラウドネスでプレイしていた本間氏も強力なドラマー。どう見ても素晴らしいメンバーだと言えます。
再結成後の作品の特徴として、インスト曲が必ず1曲入っているのも楽器奏者には嬉しい限り。

SEVEN HILLS (2001)

●「Grieve Of Heart
●「XTC
●「Running Blood
●「The Innocent Man

再結成後の1stスタジオアルバム。良作です

1曲目の「Grieve Of Heart」を聴いた時の感想は、素直にカッコイイ。まず坂本氏のボーカルが半端なく良いです。解散前は森川派だったので、坂本英三どうかなぁ?と疑ってました。アニメタルは聴いてましたが、本格的なバンドではどうなるか未知数でしたね。

Grieve Of Heart」はメタルというよりハードロックの領域。メロディが秀逸で坂本氏の魅力が詰まってます。歌唱力間違いなく上がってます。伸びやかな高音域の美しい坂本ボイスをご堪能あれ。

XTC」はテンポの速いヘヴィチューン。この曲は声を歪ませてパワフルに歌っています。そして何よりギターソロ前のシャウトが超絶。これぞシャウトのお手本。世のロックボーカリストよ、学べ(笑)。

Running Blood」はイントロから好き。ギターは非常にシンプルなんですが、コード進行とサウンドが私好み。歌に入れば坂本氏が引っ張ってくれますから、バックがシンプルでも安心して聴けます。この曲の個人的ハイライトはギターソロ。サビの歌メロを踏襲した後半のフレーズが大好き。

The Innocent Man」はミディアムロック調。バックは音を詰め込み過ぎず、ボーカルが引き立っており、坂本氏の歌を堪能することが出来ます。ホント上手いです

アンセム、やってくれました。今後も期待せずにはいられない良曲が沢山収録されており、これは中々オススメの作品です。やっぱアンセムってメロディがイイよね。

OVERLOAD (2002)

●「The Voices
●「Demon’s Ride

Seven Hillsが良かったので、期待値上がってたのもあるのですが、今作は正直普通。

そんな中「The Voices」と「Demon’s Ride」の2曲は中々グッド。

The Voices」はスピードあるメタルナンバーですが、引くところは引いて出るところは出る、というメリハリあるバックアレンジに工夫が感じられます。ボーカルも同じで、ただ平坦に歌っているのではなく、強弱をつけたり声の出し方に変化をつけて表現しています。

Demon’s Ride」はイントロのギターメロディがシンプルながら印象的で好き。坂本氏の表現力の高さもよく分かる楽曲で、喉を絞めて低音成分を強く出しているところもあれば、軽めに歌っている箇所もあり、更には高域の発声もいくつか使い分けています。よく聴けば分かる、ボーカル必聴の曲です。

ETERNAL WARRIOR (2004)

●「Onslaught
●「Eternal Warrior
●「Life Goes On

ファンの方なら分かると思いますが、我ながらつまらぬ選曲が続いてます(笑)。というのもピックアップしている曲は、後のベスト盤(2007)に入ってるものばかりなんですよねぇ~。まぁ当たり前っちゃあそうなるんでご勘弁を。

Onslaught」はこの作品の1曲目。こういうの作っとけばもうド安定、というアンセムメタルナンバー。メロディが良くスピード感のある楽曲です。清水氏の攻撃的なギターソロが気持ちイイです。

Eternal Warrior」もヘヴィなバックにしっかりしたボーカルが乗っている、アンセムらしい曲。この曲のギターソロにおいても清水氏の粒のそろったプレイが心地よく、彼のレベルの高さが分かります。

Life Goes On」は3連で純粋に良い曲。特にサビメロディが良く、坂本氏の突き抜けるようなハイトーンが素晴らしいです。クリーンに発声していて、とても美しく煌びやかなトーンを聴けます。

IMMORTAL (2006)

●「Immortal Bind
●「The Beginning
●「Echoes In The Dark

アンセム自身、彼らが自信作と銘打つ力作。確かに全編を通して素晴らしい楽曲ばかり。ハッキリ言って、この時点で国内最強のHM/HRバンドは「アンセム」だと断言できます。

それはやはりボーカルの力量が大きいですね。坂本氏の歌唱力は衰えるどころかますます磨きがかかり、再結成組の中では断トツのパフォーマンスを披露しています。

1曲目の「Immortal Bind」はアレンジもメロディも完成度の高い楽曲で、アンセムだけが生み出すことの出来る音だと思います。全員素晴らしいですよ、ホント。本間氏のドラミングも、柴田氏のベースも気持ちよく動いており、高い技術の中にも余裕を感じられます。貫禄ですね。

The Beginning」はノルも良し、歌うも良し、聴くも良し!それ程速い曲ではありませんが、心地よいテンポ感です。歌が本当にしっかりしているので、楽曲バランスが凄く良い。この曲も柴田氏のベースラインが結構動いていて、ボーカルは楽しいだろうなぁ(笑)。

Echoes In The Dark」はかなり好きな曲です。タイトル通りAメロはダークでミステリアスな印象のメロディですが、サビにあたる次の展開で一気にオープンになります。ここのメロディが最高にイイです。その後またメタル節に違和感なく戻る構成もグッドですぞ^^b

他の楽曲もスピードあるものばかりで、終始カッコイイ作品です。オススメ!

BLACK EMPIRE (2008)

●「Black Empire
●「Heat Of The Night
●「You
●「Walk Through The Night

メロディアスなものからスピードメタルまで、バラエティに富んだ楽曲が並ぶ隠れた名盤

1曲目の「Black Empire」は完全メタルサウンドでありながら、サビが非常にメロディアス。これぞアンセム、といったタイトルチューンに相応しい楽曲。シンセを用い、ボーカルメロディに彩りを加えています。

Heat Of The Night」は2曲目。「Black Empire」に続くこの疾走感、ヨダレが出ます。こちらは坂本氏のハイトーンが秀逸で、曲中のシャウトもさることながら、ラストの一発が見事に楽曲を”絞め”てます。

更に続いて3曲目「You」。サビというサビが無いようなメロディ構成。Bメロ(ブリッジ部)のように感じるメロディがこの曲ではサビに当たるかと思います。何とも言い難いんですが、そこが凄くいいんですよねぇ~(笑)。

そして「Walk Through The Night」。あえてこの曲を選んでみました。アンセム唯一のバラード調の曲ではないでしょうか。坂本氏の歌い方は極クリーンボイス。清水氏のバッキングも軽いクランチで、ソロも速弾きをせずメロディ重視。個人的にはこういうのもっとあってもいいとは思うのですが、メタル好きが望んでいるのかは疑問(笑)。

選曲にかなり悩みました。勢いある曲はもちろん、タメを活かしたロックナンバーや、キャッチーなサビが印象的な曲など、他にも盛り沢山です。メタルメタルな作品ではないかもしれませんが、かなりオススメ!

HERALDIC DEVICE (2011)

●「The Sign
●「Go!
●「Wayfaring Man

メタルというジャンルの特性上、全ての楽曲を”立たせる”ことは容易ではありません。どんなに素晴らしい音でも、工夫なく同じ事を同じ表現で演り続けられると、必ず飽きがきます。

アンセムの武器の一つがメロディで、メタルバンドという枠で見ると圧倒的に秀逸です。そのメロディを活かすも殺すもボーカリスト次第。坂本英三という男、やっぱグレイトです!

1曲目の「The Sign」はメロディという武器がいかんなく発揮されています。国内HM/HRバンドで、これほど伸びやかなボーカルを取れるのは、今、坂本氏しかいないのではなかろうか。

Go!」はギターイントロから熱いです。畳みかけるメロディ部分を聴くと、森川氏が歌っても面白そうかな、なんて思ったりしました。終盤の坂本氏のハイトーンは、彼が最も得意とする音で伸ばしていて、気持ち良すぎだ。

Wayfaring Man」は曲中で表情をガラッと変える曲。序盤はがっつりメタルワールドなんですが、サビ以降は非常に世界観のある素晴らしいメロディが展開されます。楽曲の絞めに向かって上げていき、ラストのボーカルに痺れます。

BURNING OATH (2012)

●「Unbroken Sign
●「On And On
●「Get Away
●「Dance Alone

いやぁ~再結成後のアンセムはいいですなぁ(笑)。シンセを使用したり、コーラスを被せたりするのを嫌う、生粋のメタルファンもいるかも知れませんが、私は全然大歓迎!

Unbroken Sign」は正にそういった工夫がなされたアンセムらしいメロディアスな曲。音数少な目なボーカルメロディが印象的です。「On And On」も上物で厚みを加えつつ、最後まで疾走感を損なわないメタルナンバー。特にサビがお気に入り。

Get Away」は前作「Wayfaring Man」と似た構成。前半と後半で違う、こういうギャップが大好物。そして”ザナドゥ”という歌詞が妙に耳に残る(笑)のも面白い。

Dance Alone」もスピーディでメロディアスな、アンセムメタルが炸裂。ヘヴィなサウンドでありながら、コーラスを被せたサビが際立ってます。坂本氏の声だからこそ、というのもあるでしょうね。

この作品もかなりの良作。ってかここまで全部好きかも。

BLAST (2013)

●「Blast

映画「HK 変態仮面」の挿入歌。配信シングル。CDで欲しい方は映画サウンドトラックにも収録されております。

変態仮面、懐かしいですね。ジャンプで掲載されていて、ギャグ漫画でありながら、意外と感動出来る回もあった記憶があります。なんにせよ挑戦的な作品。

その「Blast」なんですが、曲としての完成度が高く、名曲と言えます。イントロのギターフレーズだけでも伝わる程。歌メロに入ると確信さえ生まれます。こう来てこう来たら間違いないだろ、的な。

坂本氏の歌唱と、メロディが見事にハマっている感じがします。さらに歌詞もバッチリなんですよね。歌い手と楽曲、そして歌詞と全てが見事に融合したロックナンバーです。

ドラムの本間大嗣氏が、膝の状態が芳しくなく、後に脱退せざるを得なくなります。この楽曲も、当時サポートを務めていた田丸勇氏が担当している模様。
再結成後のアンセムは誰が欠けても嫌だったのですが、今回ばかりはしょうがないですね。本間さんのドラム本当に好きでしたから、凄く残念。今はただ復調されることを願っています。

そして、坂本氏も旅立ちの時が・・・悲しい。

後期(2014~)/Vo.森川之雄

ABSOLUTE WORLD (2014)

●「Shine On
●「Destroy The Boredom
●「Don’t Let It Die

アンセム2度目となる、坂本英三 ⇒ 森川之雄のボーカルチェンジ。まぁ、本人たちも多くのファンも、森川氏じゃないと納得できないとこが、何となくある気がします(笑)。

ドラムも田丸勇氏が正式加入。その実、違うバンドになった感はあります。

今作の森川氏は、相変わらずの図太い声とパワーある歌唱は健在、なんですが、高域成分は明らかに落ちてますね。ハイトーンは出せてますが、年齢による衰えは確かに感じます。坂本氏が特異とも言えますが。

それでも1曲目の「Shine On」はド安定ナンバーです。ウン、かっこいい!この曲の個人的ハイライトはギターソロですね。清水氏のメロディセンスが詰め込まれた素晴らしいフレーズを聴けます。

Destroy The Boredom」は2分チョイの短い曲。森川氏にマッチした畳みかけるメロディで一気に攻めています。引っ張り上げて高音を出す技術的高さは流石ですが、シャウトがちょっと軽いです。

Don’t Let It Die」も前半言葉数の多いメロディで森川節全開。そこから続くドラマティックなサビがイイですね。伸びのあるハイトーン、シャウトも複数操っています。

単発で聴くと良い曲ばかりなんですが、全体を通して聴くと変化に乏しいというか、サラッと流れてしまう印象を持ちました。ともあれ、パワーに溢れ、かなり仕上げてきた作品だとは感じます。

ENGRAVED (2017)

●「The Artery Song

ごめんなさい、最初に言っときます。あんま良くないです。

まずミックスバランスおかしい。ボーカル、特にドラムに常に付きまとうコンプ感。前作と比べても対極の迫力。これだけパコパコさせてどうしたいの?(笑)。そういう音作りなのか、ベースがボワついてますね。ギターも引っ込みすぎな気がします。

まぁ素人の意見なんで、言いたい事言ってやります。

1曲目の「Artery Song」は公式PVもあり、この作品の代表曲といった位置付けでしょう。歌モノとして構成もしっかりしています。どこか哀愁感漂うサビメロと、それにマッチした歌詞が非常に印象的で耳に残ります。

作品全体を通して、森川氏にしてはキーが低く、色々勘ぐってしまいます。シャウトは所々で聴かれるのですが、実音ハイトーンは厳しくなっていくのか、う~ん、頑張ってもらいたい!

今作は個人的にはヒットしませんでした。次作に期待!

おすすめのベスト盤

ULTIMATE BEST OF NEXUS YEARS (2012)

こちらは解散前までのベスト盤。2枚組で33曲収録とボリューム満点。

年代順に選曲されており、代表的なものは網羅しています。アンセム入門にオススメできます。さぁ、ここから入って深みにハマろう(笑)。

CORE~BEST OF ANTHEM (2007)

再結成後のベスト盤。17曲収録。

2007年作なので「Immortal Bind」までのベスト。これは私も所有しているのですが、かなりいいですよ。今回私がピックアップしたものとほとんど同じ曲ばかり。

アンセムのみならず、メタルに少し興味があるライトユーザーや、初心者にもオススメ。
聴きやすいですよ。

終わりに

今回は2人のボーカリスト「坂本英三」と「森川之雄」に焦点を当て、アンセムというバンドと共にご紹介しました。この一週間、アンセム漬けで過ごし、私自身彼らの新たな魅力を再発見することも出来ました。

互いに異なる個性を持っている1流ボーカリストですが、個人的好みでは解散前は森川之雄派、解散後は坂本英三派ですかね。

特に坂本氏が近年、これ程のパフォーマンスを披露してくれるなどとは夢にも思いませんでした。非常に澄みきったその声を保ち続ける、否、作り上げた秘訣はなんざんしょ!やっぱタクシードライバーか(笑)。
彼に対し敢えて不満を言わせて頂くと、ラ行で舌を巻いちゃう癖がある所。耳に付きやすいので、気になっちゃうと拾ってしまうんですよねぇ~。

一方の森川氏は解散前のアンセムのまさしく”声”。彼がボーカルをとった「Hunting Time」は我が生涯の名盤です。
近年では徐々に衰えが見えつつも、年齢からは考えられないパワフルな歌唱はまだまだ健在。これからのアンセムにおいて、彼がどういった表現を見せてくれるのか、しっかり追い続けたいと思います。

それでは、大変長くなってしまいました(いつも通り)。
ここらでお開きと致します。最後までご覧頂き、感謝です!