1音だけで全てを語る!感情の人「Paul Kossoff」

おすすめギタリスト第四弾。

今回はイギリスのバンド、フリーのギタリスト「ポール・コゾフ」をご紹介。私自身、その存在を知った時には既に彼は他界しており、感銘と喪失感を同時に受けた不思議な印象が強く残ってます。

プレイスタイルはブルースを基調とした、音数の少ない非常にシンプルなもの。レスポールを愛器としており、私のレスポール愛は彼なくしては生まれ得なかったと断言できます^^

時代も流れ、若い方たちが彼との接点を持つ機会もあまり無いかと思われます。だからこそ、あなたがギタリストであるならば、この機に是非一度聴いてもらいたい。

世界が広がる可能性は「」です。

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Paul Kossoff ポール・コゾフ

プロフィール

・本名 : Paul Francis Kossoff
・生年月日 : 1950年9月14日
・死没 : 1976年3月19日(25歳)
・出生国 : イギリス

エリック・クラプトンに影響を受けギターを手にし、1969年にバンド「フリー」のギタリストとしてデビュー。ドラッグが原因で若くしてこの世を去っています。それ故、ギタリストとしての活動期間はとても短いです。
ですがフリーは精力的で、1年にアルバムを2枚出していたり、彼の7年に満たないキャリアから考えると、かなり多くの作品が残されたと言えるのではないでしょうか。

それでも、早すぎる死にはやはり残念としか言えません。

FREE(フリー)について

レッドツェッペリンが1968年デビュー、時期をほぼ同じくしてフリーは活動を始めています。デビュー時メンバーが全員20歳に満たない若さ。荒削りではありますが、バンドサウンドの何たるかを彼らから教わることが出来ました。

アナログ録音が為せる業なのか、バンド演奏の抑揚がそのまま収録されたものが多くあり、ライブ感というか物凄いパワーを放っています。音割れやハウリングノイズなんかも収音されている楽曲もあり、時代を感じます。

ジャンル的にはブルースロックですが、ポップ調の楽曲も結構あります。それらを見事に歌い上げるポール・ロジャースの存在が第一ですが、サイモン・カーク、アンデイ・フレイザーのリズム隊無くしてこのバンドは成立しなかったでしょう。

プレイスタイル

テクニカルなプレイなどなく非常にシンプル。ブルースを基調としたバッキングは繰り返しの連続。これだけ聞くとただの「退屈なギタリスト」という烙印を押されてしまうかもしれません。

基本的には音数の少ない楽曲が多いですが、実は”弾けない”ということではなく、1stアルバムやライヴ等では、速いパッセージも披露しており、攻撃的な一面も有していることが分かります。

ただやはり彼の最大の魅力は「泣き」のギター。感情をフルに込めたチョーキング、そこから繰り出される激しいヴィブラート、20歳そこそこだった当時の私は、このたった「1音」にノックアウトされてしまいました。

ポール・コゾフは決して上手くはありませんが、レスポールから生み出される彼のエモーショナルなサウンドは、レスポール好きには堪らないものがあります。

このアルバム、この曲を聴くべし!

公式に発表された作品もあれば、どこが出してるのか分からない海賊版的なものもあります。私はとにかく見つけたら即ゲットしてきたので、マイナーなものは避け、出所が確かなもののみをご紹介していきます。

FREE

Tons Of Sobs(1969)

フリー及びポール・コゾフのデビューアルバム。これぞブルースロックといった楽曲が多くあります。良い意味でまとまっておらず、荒々しくもパワーに満ち溢れています。

フリーの作品の中では最もロック色が強く、コゾフのギターも音数が多め。「Worry」「Walk In My Shadow」のギターサウンドは、ナチュラルなレスポールの音と歪みが非常に心地よいです。ミックス等で音量を操作するのではなく、バンド自体で強弱を出しているのがハッキリ分かり、まさに音を表現しています。

I’m A Mover」はベスト盤にもよく収録される代表曲。ずっと同じ進行が続くこういう曲は、もうボーカル次第。なんですがバッキングが素晴らしいですね。シンプルなんですが、ベースのアンディ・フレイザーのセンスの高さを感じます。

続く「The Hunter」はブルース界のキングの一人、アルバート・キングのカヴァー曲。シャッフルナンバーで軽快なノリの原曲ですが、フリーが演奏すると確実に彼らの音になっています。
特筆すべきはやはり抑揚、強弱。ギターソロに入るところから後半にかけての「上げ」がホント凄いです。テンポアップも意図して行っていて、10代の若造達がこの様な音のコントロールをできていることが、彼らの非凡さを証明していると思います。

Free(1969)

1969年に出された2枚目。このアルバム中では1曲目の「I’ll Be Creepin’」が秀逸です。

大別して2部構成の進行なんですが、ギターとベース、どちらのフレーズもシンプルながら、絶妙のバランスで楽曲を組み立てています。
ギターではワウを効果的に使用していたり、ソロから後半にかけて音を重ねていたりと様々工夫していることが分かります。このシンプルさで楽曲が成り立っていることが一番の驚きですが。

この「I’ll Be Creepin’」がフリーというバンドの基本的な楽曲構成です。前半部はほぼ同じフレーズで進行し、サビやギターソロなど変化が起こる箇所で強烈に爆発する感じですね。

Songs Of Yesterday」では速めのフレージング、「Mouthfull Of Grass」では美しいギターサウンドを聴けます。
シンプル・イズ・ベスト、言うは易し行うは難し、です。

Fire And Water(1970)

このアルバムにはフリーの最大のヒット曲「All Right Now」が収録されています。「Remember」などもそうなんですが、非常にキャッチーで代表的なオールドロックサウンドという印象ですね。個人的にはフリーらしくないとも感じますが。

それでも、このアルバムは良曲揃いです。そしてコゾフの音数もどんどん減っています。「Fire And Water」は完成度が高く、音が違えば十分ハードロック、カッコイイというか渋い(笑)。ソロでのサスティーンのある伸びやかなレスポールサウンドはとても気持ちいいです。

5曲目に「Mr.Big」という曲があるのですが、これは私とフリーを結び付けてくれた”キーワード“。

そう、ポール・ギルバート、ビリー・シーンが在籍し今も活動を続けているバンド名が、同じく「Mr.Big」。彼らのバンド名はこのフリーの曲から取られ、またカヴァーもしています。

フリーの「Mr.Big」を初めて聴いた時、言葉を失いましたね。それはもう色んな意味で。ただこのスタジオ音源よりも、ライブバージョンの方が遥かにイイので、詳しくは後述いたしますm(__)m

Highway(1970)

2年で4作目、駆け抜けてますね~。フリーはひいき目に見ても全ての曲が素晴らしいとは言えませんが、アルバムの中には必ずキラーチューンが入ってます。今作では「The Stealer」。

お得意の構成ですが、やっぱそれがイイ!この楽曲は8ビートのハネ系で、バックのスウィング感を出すのは中々容易ではありません。コゾフのプレイは後半のチョーキングがええです。ホント味がある

Ride On Pony」もフリー節炸裂。こういうゆったりした曲って、以前は聴いてて退屈だったんですが、音のない空間部分を表現する難しさ、そして心地よさを知れる良曲です。これが大人になるということなのか!でもハマったのは20代前半なんだけど(笑)。

このアルバムにおけるコゾフのプレイは、「バッキングがハイライト」と言えるかも知れません。

Free Live!(1971)

全8曲収録のライブアルバム。これはオススメです!

フリーというバンドは間違いなくライブバンドだというのが分かります。演奏ミスや粗もありますが、スタジオ音源とはアレンジも変わっており、自由度の高さがハンパないです。基本となる土台(スタジオ音源)はしっかり残しつつ、リズムも歌メロもバッキングも、その時々に応じて表現している感じです。

コゾフのギタープレイ、特にソロにおいて顕著に現れています。全く同じ演奏を彼はほとんどしません。おそらくほぼアドリブのような感じで、その場その場の感情で音を奏でているものと思われます。それ故、ハマった時には強烈に輝きますが、そうでない場合ももちろんありますね(-_-;)

このアルバムの演奏は、見事に「ハマって」ます!素晴らしいです。

特に「Mr.Big」はちょっと考えられないような真に迫ってくるサウンドを叩き出しています。私がフリーというバンド、ボーカルのポール・ロジャース、そしてギターのポール・コゾフを一気に好きになった楽曲です。
ギターソロからベースソロへの流れ、そして終盤になるにつれ、ぐんぐんテンションが加速して上がっていく感覚は、今聴いてもやっぱスゴイ!

次の「The Hunter」では長いギターソロがあり、彼のライブプレイを存分に堪能できます。スタジオ音源よりもスローなテンポで演奏されてますが、リズム隊とギターとの絡みも聴いてて面白いです。

Free At Last(1972)

タイトル通り、オリジナルメンバーによる最後の作品。この時期、彼らはかなりゴタゴタしており、解散、再結成、結局解散、という渦中に出されたものです。

そんな状態であるにも関わらず、楽曲群は安定感が増しており、耳に残りやすいボーカルメロディのしっかりした曲が多く収録されております。その反面、これまでの様な荒々しさは薄れ、そこが少し寂しくもありますね。

歌モノとしては良いのですが、コゾフのギターに関しては特筆すべきものは正直感じません。個人的にはもう少し幅広く弾いてもらいたいと思う程、同じような1トーンプレイが多く聞かれます。

ちょっと辛口ですが、ボーカル目線だと「Little Bit Of Love」なんかは猛烈に好きですよ^^

Heartbreaker(1973)

ベースのアンディ・フレイザーが完全に脱退し、ポール・コゾフも数曲の参加にとどまっており、フリー名義ではありますが、その実ほぼ違うバンドと化しています。

ただ、これぞロック!といった名曲「Wishing Well」が1曲目を飾っているんですね。流石はフリーといった所。コゾフはプレイしてないようなので、今回は詳細スルーです(笑)。

Come Together In The Morning」ではコゾフの泣きのプレイを聴けます。これこそ彼の真骨頂。たっぷりとした”間”を切り裂くようなチョーキングが印象的。オクターバーか何か使ってるのかな?音も印象に残ります。

今作で最も好きなのがタイトルチューンの「Heartbreaker」。フリーお得意の構成。
これ個人的に超名曲だと思っているんですが、そんなに有名ではないかもしれません。バッキングはどうか分かりませんが、単音フレーズはコゾフがプレイ。以前の様な激しいヴィブラートはありませんが、フレージングが秀逸で、彼のソロの中でも屈指のメロディラインだと思います。

特に難しいことはしていませんが、何故か心に響く、それがポール・コゾフの魅力だと改めて確認できました。

すごくいい作品なのですが、残念なのは録音状態で、私の持つ初盤では音割れしています。

The Free Story(1974)

私がフリー入門に選んだ最初のアルバム。ベスト盤です。

買った結果・・・ハマり(笑)

選曲も良く、間違いのないベスト盤だと思います。そして何より「Mr.Big」がライブバージョンで収録されているのが大きい。やはり名演だったと認知されているようです。

Just For The Box」はコソフのプロジェクト、「Lady」はロジャースのバンドと、厳密にフリーとは無関係のものも収録されており、何だかお得感もあります。特に「Just For The Box」はギターインストで必聴です。

まず最初に手にする1枚として、このアルバムは大変オススメです。

The Best Of Free(1991)

こちらもベスト盤。リマスターされ音圧もアップ、若者にも聴きやすい音源となっておりますが、少しリバーブを利かせ過ぎな感があります。まさに90年代のミックスですね。

注意すべきは「All Right Now」がシングルバージョン?かな。ギターソロが幾分カットされたバージョンとなっており、コゾフフリークには不満でございます。そうです、私の様なね!

今作より「The Free Story」か、次の「Molten Gold」の方が個人的にはオススメ。

Molten Gold : The Anthology(1993)

こちらは2枚組ベスト。オリジナルマスターを年代順に選曲し収録したもの。

1991年のベスト盤よりもコアな内容になっていると思います。更に「The Stealer」は別バージョンで、オリジナルとは異なったギタープレイが収録されています。ファンなら是非入手しておきたい。

ラストを飾るのが「Heartbreaker」となっており、選曲、構成とも見事です。2枚組でボリューム満点、中古なら安くゲット可能ですし、これまたおすすめのベスト盤。

Songs Of Yesterday(2000)

こちらは4枚組となっており、完全なコレクターズアイテム。

未発表テイク、未発表ライブ音源、ニューミックスバージョンと、真なるファンのための作品です。こんなの出してくれて、本当に有難うございますm(__)m

もちろん私、発売時に新品で購入させて頂きました。

特にオススメなのがライブ音源で、アナログ感満載です。収録された音のバランスは決して整えられたものではありませんが、目の前でプレイを聴いているかのような迫力ある音です。

コゾフのギタープレイも攻撃的で、これまであまり聴いたことの無かった速いプレイも随所に聴かれます。更にこの音だけ聴くと、ホントハードロックなんですよねぇ。カッコ良すぎです。

ギター目線だと、実は一推しの作品であります。

その他

Kossoff Kirke Tetsu Rabbit(1972)

こちらはコゾフのプロジェクト作品です。日本人の山内テツもベースで参加しております。

この作品は個人的にあまり聴くことはありません。歌モノとしてはボーカルが弱いので。ただ前述しましたインストナンバー「Just For The Box」は、こちらのアルバムに収録されております。

アルバムを通してギターの方は、コゾフらしいプレイが随所にあり、美しいコードワークなども聴くことができます。しかし、全部インストにしても良かったのではないか、というのが本音ではあります。

Back Street Crawler(1973)

コゾフの1stソロアルバム。まず衝撃を受けたのは「ストラト持ってんじゃん!」(そこかいっ)
レスポール好きとしては黙っていられない所なのでお許しを。

5曲収録と少なめなんですが、1曲目の「Tuesday Morning」が17分39秒もあります(笑)。しかもインストナンバー。彼のギターを堪能するにはもってこいですな。
ただ楽曲としては・・・です。フリージャムといったプレイが続き、そういったスタンスで作られたモノなのは間違いないですね。部分ごとのプレイを楽しむ感じで聴くとイイ感じかな。

Time Away」は泣いてますよ~。こちらもインストでしかもスローブルース。ポール・コゾフの本領発揮です。大胆な楽曲展開等はなく、同じ進行が続きますが、その中でたゆたう彼のサウンドにはグッときます。

Molten Gold」のボーカルはポール・ロジャースです。彼の声とコゾフのギター、やはり抜群の相性だと思いますね。こちらもスローテンポな楽曲で、コゾフらしいフレーズが満載です。

インストが3曲あり、ギタリスト、ポール・コゾフの魅力溢れる中々の良作。

Croydon June 15th 1975(1983)

全14曲収録。彼の貴重な生演奏をたっぷり収めた作品です。

1975年のライブですので、Back Street Crawlerというバンドの演奏です。
上記のソロ作品と混同してしまいがちですが、ソロアルバム「Back Street Crawler」のリリースは1973年で、その後1975年にBack Street Crawlerというバンド名で「The Band Plays On」というアルバムを発表しています。

コゾフが死の直前、最後に活動していたバンドがBack Street Crawler。そのライブアルバムです。当時、彼らのスタジオアルバムは入手出来ず、私が今現在持っているのはコレだけ。
この特集記事を書くにあたり、色々思い出してしまい、CDコレクションが確実に増えそうです(笑)。

このライブにおけるコゾフのプレイは、ブルースを基調としたものばかりではなく、ロックンロール調のものやポップ調の明るい曲なども披露してくれています。サウンドは間違いなく彼のものですけどね。

特に好きなのが「All The Girls Are Crazy」「Bird Song Blues」。どちらもバッキングのドライブ感が心地よく、アップテンポでノリの良い曲です。

Blue Soul(1986)

このアルバムはポール・コゾフのベスト盤

フリーの曲からソロプロジェクト、他のアーティスト作品でのプレイなど充実の内容。タイトル「Blue Soul」というのもカッコイイですが、ジャケットが素晴らしい。彼がどのようなギタリストであるかが一目で分かっちゃいます。

彼に焦点を当てた作品ということで、文句のつけようがありません。

フリーのライブ音源「Trouble On Double Time」「Crossroads」の流れは堪らないです。どちらもコゾフの弾きまくる、珍しい?プレイを聴けます。特に「Crossroads」はクリームのカヴァー曲なんですが、見事なまでのフリーサウンド。超満足^^

もう1曲、Uncle Dogというグループでゲストプレイした「We Got Time」におけるコゾフのギターがマジ最高です。女性シンガーによる王道スローバラードで、曲自体も良く、そこに溶け込むクランチサウンド、ソロにおける泣きのプレイ、何度聴いたか分からない程大好きな楽曲です。

このアルバムは私にとって、永遠のマイフェイバリット!

The Collection(1996)

ベスト盤が続きます(笑)。

とにかくコゾフの音源は買い漁りました。収録曲には他のベスト盤と被ってるものがあるのは仕方ないですが、聴いたことの無い音源が必ず入っているんですねぇ~。まさにそのためだけに!

彼のすべてを追い切れている訳ではありませんので、こういったベスト盤は正直ありがたいです。

他にも「Stone Free(1997)」というベスト盤も出ているのですが、コチラとほぼ内容が被っており、未発表音源等もありませんので、どちらか持っていれば事足ります。

彼のベスト盤は沢山出ているのですが、やはり「Blue Soul」が一推し。

終わりに

今回はエモーショナルギタリスト、ポール・コゾフをご紹介しました。

テクニカル思考の強いギタリストからは「つまらない」とか「下手」だとか、そういう意見も実際耳にしたことが残念ながらあります。ただ私は運よくボーカリストだった。

ギタリストの強固なプライドや信奉する絶対神などもありませんでした。いいと感じたものや心に響いたものをフィルターなく受け入れることが出来た訳です。

こういうスタイルを今もずっと持ち続けられていることは、ホント良かったと感じます。基本ハードロック好きですが、ゆずとかミスチルとか気に入った曲は買いますしね。

ポール・コゾフは若くして他界してしまい、それが本当に残念で仕方ない。盟友のポール・ロジャースはまだまだ現役で、フリー解散後から現在に至るまで、数多くの作品を世に残しています。それを思うと、コゾフの新しいプレイ、新しい音をもっと聴きたかったとしみじみ思います。

近年、フリーのべーシスト、アンディ・フレイザーも他界し、60年代、70年代の音楽史に名を刻んだ偉大なアーティストたちが失われつつある、そういった流れの中に我々はいるのだと痛感しています。

人生を刻み、己の証として残すことが出来る”音楽”は、やっぱり素晴らしいものだと心から思います。