ボーカリストが有する才能とは?〈後編〉

前回の続き、「ボーカリストが有する才能とは?」の後編になります。

前回は、「皆すべからく努力しておる!!」という内容でした(笑)。
ようやく本題に入りたいと思います。

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ボーカリストの才能

私、前回の最後に不穏な言葉を残しました。ボーカリストにとっての「非情な事実」です。自分ではどうすることもできないことがあります。それは間違いなく「才能」と呼べるものの1つです。

そして、ボーカリストだけの話ではなく、人間的な能力とも言える「才能」も確実に存在します。

では、その「才能」とは何なのでしょうか?

分かりやすくするために、「才能」という言葉を別の言い方に置き換えて、それぞれ見ていきたいと思います。私がしっくりくると思う変換は次の3つになります。

  1. 「才能」=「個性」
  2. 「才能」=「センス」
  3. 「才能」=「超能力的な何か」

3はオチみたいになってますが、多くの人が抱くイメージはこれではないでしょうか?普通の人にはない何か、という感じですね。

そして、特に重要な意味が含まれているのは1と2です。この2つについて述べていきたいと思います。

①「才能」=「個性」

念のため、「才能」と「個性」をそれぞれYahoo!辞書で調べてみました。

●「才能」

物事を巧みになしうる生まれつきの能力。才知の働き。(出典元:デジタル大辞泉)

●「個性」

ある個人を特徴づけている性質・性格。その人固有の特性。パーソナリティー。(出典元:大辞林 第三版)

さて、ボーカリストにはとても大切な、固有の特性とは何でしょうか。そして、それこそ変えようのない、生まれついての「才能」なのです。

簡単です。わかりますよね?

「声」です。声質ですね。

ギターのように声帯を持ち替える、なんてことは出来ません。極論になりますが、出せる音色はたった一つしかないんです。決められた音色で一生戦っていくしかありません。

ルックスもそうですよね。どうしようもない。美形の皆様、おめでとー

あなたは自分の声が好きですか?

自分の口から出る音色。好きですか?嫌いですか?

おそらくあまり意識はしたことがないかも知れませんね。ずっと発してきた音ですから。ですが、本気で歌い手になりたいと思い始めた時、ジャンルによっては「制約を受けてしまう」と感じてしまうことがあるかも知れませんね。

理想(やりたいジャンル、出したい音)と現実(自分の声質)のギャップです。

ボーカリストに必要な要素の中でも、最も重要だと言っても過言ではない、ベースとなる音色を我々は選ぶことができないのです。

ですがご安心を。そんなの些細なことなんです。気にしなくていいです、ホントに。

ただ悩み、不安に思っている人に、私は言いたい。

自分の声を愛してあげましょう。

理想のような歌声じゃないと悩むのは時間の無駄。自分だけのその才能は、歌い方の工夫次第で、可能性を無限に広げていくことができます。気付けるかどうかの差です。

※↓の話は少しテーマから脱線気味なので、補足とします。面倒な方は読み飛ばして下さい。

週一回、帰宅途中にとある駅前を通るのですが、そこではいつも路上ライブが行われています。簡易PAで音出ししてますので、どこかのインディーズ会社かイベント会社だとは思いますが。
そこに出演している、歌っているアーティスト(ほぼ素人)たちの出す音に、私は一度も何も感じたことがありません。実際多くの人が素通りし、知り合いらしい取り巻きが数人いて道を塞いでいるので、感想はただ「邪魔」(笑)。
「歌上手いねぇ~」と思うことはたま~にありますが、それだけ。やってる方は真剣に、そして行動に移しているので素晴らしいことだとは思いますよ。ですが、大事なことに気付いていない。
その路上ライブ(HipHopもやっていたのでジャンル縛りはないかと)はもう何年もやっているのですが、みんな同じ歌い方なんですよ。みんなです。誰もその他大勢から抜け出すことを考えていません。ようは今流行りの曲。流行りの歌唱法。
人気のある歌手に憧れて歌うのはいいのですが、人気がある、ということは目指す人もめちゃくちゃ多いということ。少しばかり上手いだけでは突き抜けることは一生できないでしょう。みんな見ているものが狭すぎる、ということです。
だからこそ、多ジャンルの音楽に触れ、知識や技術を取り入れていかなければ絶対プロにはなれません。断言します。物真似や二番煎じは求められていません。
スウィートなバラードばかりに何をそんなに拘っているのか、疑問で仕方ない。みんな折角オリジナルの声を持っているのに。
つまり、声という才能を生かすも殺すも、使い方次第ということです。少し熱くなってしまいました。このへんの話もいつかテーマにしたいと思います!

世界に一つだけの才能

この天から与えられし声質。世界に一つしかない、あなただけの武器なんです。好き嫌い言わずに、より活かせるよう磨き上げるほかありません。

まずは自分の声質を知ることから始めましょう。そして、友達から恋人に^^

もし自分で自分の声を聞いたことがない人は、スマホにアカペラで録音して是非聞いてみましょう。初めて聞く自分の声には嫌悪感しか沸きませんから(笑)。

そして喉は生もの、大切に付き合わなければいけません。先にも書きましたが、替えが効きませんから。我々と同じように喉も老いていきます。年齢とともに声のハリ、艶が失われていくのは仕方ありません。末永く元気でいてもらいたいものです。

②「才能」=「センス」

続いては2番です。早速、辞書の意味からいきましょー。

●「センス」

物事の感じや味わいを微妙な点まで悟る働き。感覚。また、それが具体的に表現されたもの。(出典元:デジタル大辞泉)

物事の微妙な感じや機微を感じとる能力・判断力。感覚。(出典元:大辞林 第三版)

なんか分かるような、分からないような。にほんごむずかしい。
英語「sense」の意味はもっと漠然としてます。感覚、勘、判断能力、といった感じ。

私的には、「ニュータイプ」的な意味合いも近いのでは?と思います。ええ、またアニメの話ですんません。先読み能力的なものですね。よく周りが見えて、気配りができる人っていますよね。「お茶」と言われる前に「お茶」を出す、みたいな。これも立派なセンスと言えると思います。

では、芸術や音楽の分野におけるセンスとはどう捉えるのがベストでしょうか。その分野における「突出した能力」のことでしょうか?それなら「才能」と同じですね。

どんなジャンルでも構いません。身の回りに居る、「センスのある人」を思い浮かべてみましょうか。そうすることで、結構見えてくるものがあると思います。

効率化する能力

アルバイトでも何でも構いません。誰でも一度は社会経験を積んだことがあると思います。その職場には何人もの従業員がいて、まさに十人十色。好かれてる人もいれば嫌われてる人もいる現実。

ここで思い浮かべて欲しいのは、仕事ができる人のこと。他の人よりも作業スピードが速く、仕事量も多くこなすことができますよね?それは何故なんでしょうか。

経験値や知識の上積みがあるのはもちろんですが、仕事ができる人は、効率化する能力に長けていると言えます。状況を的確に把握し、やるべきことを無駄なく処理していけます。

バラバラのピースを、迷うことなくサクサク繋ぎ合わせていくイメージでしょうか。

どの分野でも、こういうことができる人は、呑み込みが速く、吸収力が半端ないんですね。それはイコール、成長速度に直結するものだと容易に想像ができます。

センスとは、物事の本質を見極め、効率化できる能力。

とするのが、私的には一番しっくりします。

夢を叶えることが難しい理由

人は、あることに対するキャリアを積んでいく程、その道に精通し、やがてはプロフェッショナルと呼ばれる熟達した領域に辿り着くことができます。

しかし時間は有限。できれば早く才能を開花し、登り詰めたいですよね?ですが、すべての人が頂上に到達することはできません。これは紛れもない事実。一生底辺でくすぶり続ける人もいます。中間で妥協してしまう人が、割合的に最も多いでしょう。

それは先にも述べた、成長速度の差にあります。センスのある人は、これが圧倒的に早い。
逆にセンスが無ければ、より多くの時間を費やさざるを得ないということになります。

ゴールまでの道が、真っすぐに見える人と、クネクネ曲がって見える人、と言い換えれば分かりやすいでしょうか。

残念ながら、どの分野でセンスが発揮できるのかなんて、やってみないことには分かりません。夢を叶えるのが難しいのは、こういったことも理由の一因だと私は思います。

諦めずにやり続けること

「センスがない人は時間がかかる」とすると、諦めずにやり続けることの大切さもまた分かると思います。どんなに時間がかかっても、続けることによって夢に近づくことは不可能ではないはずです。

ですが、このやり抜く意思を持ち続けることは、本当に難しいです。大多数の人が、途中で挫折し、離脱してしまうのが現実です。よく聞く話ですね。

環境の変化や、置かれている立場によって、諦めざるを得ない場合も多々あるかと思います。厳しいものです。

ボーカリストのセンス

感じ取る力

自分の歌を聞いてもらって、第三者から単なる誉め言葉として「センスあるねー」と言われても、「はぁ?」となっちゃいます。てきとーな褒め方ですわ。「うまいねー」と変わんない。

ですが、提供された楽曲を、その楽曲の作曲家や作詞家といった、作り手さん方から評価して頂く時に、「センスがある」と言われるとめちゃくちゃ嬉しいです。

この違い、分かりますか?

作り手側は楽曲に対し、「このメロディはこういうふうに」とか、「この言葉の裏にはこういう背景が」といったこだわりを持って作っています。

歌い手側は、そういったものを感じ取り、表現するべきものなんです。ですから、「そういうものを読み取る力がありますね」と褒めて頂いてる訳です。

ただエスパーではないので、その人の感性を完璧に理解するのは絶対に不可能ですが、自分の感覚だけで、近しい所まで辿り着ける人は高いセンスを有していると言えるでしょう。

歌い手がそこまで近づいてきてくれたら、後は詰めの作業だけで済みますので、お互いに「いい仕事ができた」という満足な結果を残すことができる訳です。

ただ人の感性は皆同一ではないので、一概には当てはめることは無理ですけど。
当たり前のことですよね。

センスは産み出せばいい⁉

はじめからポイントを掴むのが上手い人がいれば、苦手な人もいますよね。「苦手だなぁ」という自覚がある人は、センスがない、と諦めないでください。

自覚がある人は、センスを産み出せることができると思います!

センスがないこと(自分のマイナス面)を認めたくない人も世の中にはたくさんいるのです。そういった人には何を言っても無駄なことが多いです。

自覚がある人というのは、ある程度自分を客観視できているということです。とすれば、自分に足りないもの、補えばいいものをどんどん知り、学び、吸収していけばいいんです。

意識して取り込んでいく訳です。頑張って、たくさん集めた「足りないもの」は、ある時にきっと一つの意味として、繋がる時があると思います。

「ピコーン!」と、まさにこんな感じに(笑)

今まで自分になかったものが誕生した瞬間。それは小さなセンスであるかも知れませんが、「ああ、こういうことだったのか!」といった気付きは、とても大切な感覚です。

時間がかかるかも知れませんし、結構な頑張りがいるかと思います。ですが、何もしない人や、認めない人との差は明らかに出てくると思いますよ。

後はそれを積み重ね、生まれたセンスを磨き続けていけばいいと思います。

元々センスがある人も、ナチュラルにこういったことをしているのではないでしょうか。

ボーカリストの表現力

ボーカリストの才能について、最後は「表現力」について考えてみたいと思います。

「表現力」とは、読んで字の如く、表現する力であります。ではボーカリストが表現するものとは何なのでしょうか?大きく分けると、次の二つになると思います。

  • メロディ
  • 言葉

表現するもの

メロディ

歌はメロディに言葉が乗ったものです。メロディは音符が繋がったもの、といった無味乾燥なものでは決してなく、流れがあり、抑揚があり、一曲を通じてドラマがあります。

Aメロの歌い出しは静かに進行し、Bメロで徐々に盛り上げていきつつ、サビで思い切りフルアップさせる。という流れが定番ですが、結構不変なものでもあります。

こういった流れを無視し、最初から最後までのっぺり淡々と歌われたら、どうでしょう?聞くに堪えないです。

ボーカリストはメロディラインの起承転結を自ら構築し、表現していかなければいけません。

言葉

言葉には意味があります。自ら書いた詩ならば尚更です。これがメロディに乗った時に、ものすごいパワーを生み出すことがあります。人の心を揺さぶり、感動させる力があるのです。

ですが、いくら素晴らしい詩がメロディに乗っていたとしても、聴き手の心に届かせることができるかどうかは、ボーカリストの「表現力」次第です。

ただの楽曲の歌詞として全体を歌うのではなく、ある単語の部分は強調してみる、とか、ここの文章は優しく語るように歌ってみよう、といったボーカリスト自身の感性で表現していくことが、とても大切だと思います。

ただ、これはメロディとの兼ね合いもあり、言葉が上手くマッチしているかどうかも重要なポイントですので、一概に言うことはできません。

表現力を磨き上げるには?

「表現力」は手に入れることができるのでしょうか?
答えは「イエス」です。磨き上げることはできると思います。だがしかし、自分自身で成長している実感を得ることはできない。

どういうことかと言うと、「表現力」とは、聞く側に委ねられた評価だからです。

自分の歌を聞いてもらった人から、

  • 「なんか心に刺さるものがあるよね~」
  • 「感動して涙が出ました!この曲大好き!」

といった感想が以前にも増して増えていくことで、ようやく実感できるものだと言えます。

身につける方法

まずは意識すること。知っているだけでも全然違いますよ。「表現力」を磨き上げようとする意志が生まれるはずですから。今後のトレーニングの必要なものリストにまずは加えておくことです。

そして、上記した「メロディ」「言葉」に重点を置いたトレーニングをすればいいんです。好きなボーカリストを研究してみるのもいいですね。新たな発見がきっとあると思いますよ。

また、感性を磨くことも大切です。結構簡単ですが、やってない人が多い。読書したり、帰り道の街並みを見上げてみたり、電車から外の景色を見てみたり、旅したり、色んな人と会ったり。

こういったよくある人生経験が、感性を刺激するんです。たまにはスマホから目を離してみてはどうですかな?(笑)

尾崎豊の才能を聞け!

尾崎豊、まさに感性の人。その表現力は圧倒的です。

尾崎より歌が上手い人は何人もいます。ですが、彼ほどの表現力、否、説得力を持ったボーカリストは、彼の死後何年も経っていますが、未だに現れていない。

ボーカリストを本気で目指す方は、もう一度じっくり聴き返してみて欲しい。

特に表現力という観点から「Oh My Little Girl」をおすすめします。囁くように優しく、言葉一つ一つを大切に表現しています。「甘えた声で」という箇所に注目すれば、他の部分の表現にも気付けると思いますよ。

これは誰にも真似できない。

声、歌詞、メロディ、歌い方、表現力、彼のいくつもの「才能」が重なり合って生み出されている、まさしくオンリーワンの音。素晴らしすぎる。

普通の人にはない、圧倒的なものを感じさせてくれる数少ないボーカリストの一人です。

まとめ

今回、ボーカリストの視点から「才能」というテーマで書いてみました。努力し続けることが大切だと言うのは前提条件として当たり前のことだと思います。これなくして成長するなどあり得ない。

ですが、人には向き不向きがあるのは事実ですし、才能という壁もあるというのも承知しています。

ただ、そういったことを逃げ道に使ってしまって、諦めてしまうのはすごく勿体ないと思うんです。だから才能という絶対的なイメージに、ほんの小さなものでも風穴を開けたかった。

意識を変えるだけで希望になることもあるんです。知ることで成長できる可能性が生まれるんです。私自身もこういったことを音楽系以外の学びの場で教わりました。

人は立ち止まらなければ、成長していけるものだと、結構本気で信じております。こんな私はかなりの甘ちゃんかもしれませんね(笑)

終点までのお付き合い、サンキューです!